箱庭療法と枯山水を掛け合わせた、”箱庭枯山水”
筆者が副住職をつとめる洞泉寺には思いつきで作ってみた、名付けて”箱庭枯山水”なるものを設置しています。何だそれ?、というつっこみが聞こえてきます。。
枯山水(かれさんすい)
まず、枯山水というもの、聞いたことはあるでしょうか?これは、石や岩だけを用いて、川の流れや山を表現する日本の代表的な庭園の技法です。素朴で質素なものにこそ美を覚える、日本人の侘びの精神を体現したスタイルと言えます。寺院でも、この枯山水の技法が用いられた庭園は多いです。代表的なのは、京都にある臨済宗 龍安寺の石庭です。
龍安寺の石庭は、15個の石で構成された5つの石組で成り立っています。その配置に西洋伝来の黄金比がとられています。また、方丈は少し傾斜がかかり遠近法が採用されています。素朴ながら緻密な計算によって計算されているからこそ、世界遺産として認められるまでの魅力的な石庭が成立しています。
箱庭療法(はこにわりょうほう)
続いて”箱庭枯山水”の箱庭とは、箱庭療法というものから取ってつけたものです。日本の心理臨床の礎を築かれた河合隼雄氏は、スイスでの留学中に箱庭療法という、砂の入った箱にミニチュアを置きながら自由に小さな庭を作ることを通じた心理療法と出会い、帰国後に広めました。言語ではなく感性に訴える技法が、日本人の国民性に向いていると考えたのです。
箱庭療法とお寺の庭園の代表的な技法である枯山水を掛け合わせて、箱庭枯山水です。まあ、こういったキットは普通に市販されているみたいですが…笑。DIYをしてみました。石は新潟県糸魚川市のヒスイ海岸で拾ったものを使用しています。
長女が立ち上がって歩いたり、何かを手に取って離すことに興味を持ち始めた1歳になったばかりの頃に、家族で出かけて拾ったのでした。どれも角が取れて、丸みを帯びていています。ただ、拾ったはいいものの、その後やり場に困っていた。でも、捨てるのが何だか名残惜しい…。そんな風に迷っていたところ、石の使い道が見つかって良かったです(笑)。
前置きが長くなってしまいましたが、設置してみた箱庭枯山水がこちらです。休憩室にあります。砂も石も触り心地が良く、癒されますよ(^^)
横にミニチュアも置いています。水場を表現するために、青いブロックを用意しています。
あくまでも、遊びながら寺院の文化に触れて頂くためのもの
ですが、冒頭でも説明したように本来の箱庭療法は箱のサイズが定められ、ミニチュアも吟味してチョイスされています。それに対して、この箱庭枯山水は難しい規定はなく副住職の思いつきで、あるものを使って気楽に作ったものなのです(笑)。ですから、心理学の専門的な機能はありません。
心理療法としてではなく、あくまでも遊びながらお寺の文化に触れて頂くことを目的としております。ただ、やってみて頂いた結果として、何だか楽しくなったり、創作意欲が満たされてすっきりした気持ちになって頂けたとしたら、こんなに嬉しいことはありません。
お寺って何だか固くて緊張してしまう方もいらっしゃるとお察しします。そこを緩和して、少し手もアットホームな空気を感じて頂きたかったということも、設置した理由です。
参拝者の方の力作の一例
これまで法要や参禅のために洞泉寺にお越しになられた方々が作られた、力作をいくつかご紹介します。
とんぼをかける時なんかは繊細な力加減が必要だったりするので、意外と難しいかもしれません。色々と試行錯誤しながら、楽しそうに作って下さる姿を見ると、こちらも非常に嬉しくなります。興味を持って頂けて、有難い限りです。
来られた際はお好きな石庭を作ってみて下さい。置いてみたいご自分のミニチュアがあれば、お持ち頂いても構いません。もし、インスタやフェイスブックをされていたら、洞泉寺をタグ付けしてご自分の作品を投稿して頂けたら嬉しいです。良ければ洞泉寺のアカウントでも共有させて下さい。